『石楠花』

『ずっと、好きでした』

友人からの告白は

雲ひとつない

夏の暑い日だった

地元にいるから

会おうよ

数年ぶりに会う絵里は

一回り上の旦那様と

成人した娘さんをもつ

年相応の女性になってた

高校の頃の面影は

目元のほくろで残す

笑顔も変わらず

むしろ年を重ねた分だけ

優しさが上乗せされたよう

太ったのよ

と、恥ずかしげに目をふせ

両肘を擦る様子は

大人の色気を感じた

『那奈は変わらないね』

『そんなことないよ』

子供を産んでいない分だけ

母性と言う部分は

絵里に比べたら

足りないのかもしれない

初めてのキスは

彼女とだった

『那奈、好きでした』

『うん』

彼女の気持ちも

性癖も

知ってた

『今の那奈なら受け入れてくれる』

私も普通に恋愛して

年下の彼と結婚した

でも心のどこかで

彼女のキスは

トゲのように

残っていたんだ

『絵里、私も好きでした』

お互いの気持ちや身体を

確認するように

頭の先から足の先まで

月日をさかのぼる

髪に

おでこに

まぶたに

優しいキスをして

髪を鋤きながら

耳を親指の腹でなぞる

少しだけ開いた柔らかい唇を

舌先で濡らし

ついばむように

小さな舌を誘導する

甘い吐息さえも

消してしまうように

流れるように味わう

一枚ずつ

お互いの服を脱がしながら

こんなところも

悦びが隠れてた…

囁くような笑いを浮かべ

鳴かせていく

同性ならではの

怖さかな

底無しの沼に

入り込んでしまったみたい