童話 ある夏の物語り(1)

ご訪問ありがとうございます。夏のおわりに、ある夏物語。

       (童話)

           

       ある夏の物語り (1)                                          

               

   

   (1) さあ お花畑へ

 朝、目がさめると巣の中は、もう、夏のはじめの、ひかりがあふれていました。

「わー、すごい天気!」

  いよいよ、きょうから、ミイたち三期生も、おねえさんのはたらきバチにつれられて、花畑に蜜を採りにいきます。

「はじめてのおつかい!はじめてのおつかい。」

と、歌うようにいいながら、羽をパタパタさせて、ミツバチのミイは、元気にベッドからとびおりました。

 顔をあらうとすぐに、蜜を一口なめ、じゅんび体操も、そこそこに部屋を出ました。

 もう、巣の入り口には、まるでピクニックにでもいくように、はしゃいでいる同級生が、羽をバタバタさせて集まっていました。

 ミイはパタちゃんを見つけ、そばにいきました。パタちゃんは同じ日に羽化した、クラスで一番のなかよしです。

      

 こないだ、はじめて空をとぶとき、指導してくれた、おねえさんミツバチが、あいさつをはじめました。

「さあ、みなさん。きのうまでで、巣のなかのお仕事はおしまい。今日からは外に出て、花から蜜と花粉のダンゴを運ぶのが仕事よ。いいわね、こないだの初飛行で、自分たちの、巣の位置は、しっかり覚えてくれたわね。

 忘れると巣に帰れなくなるから、しっかりしてね」

「ハイ」

 ミイは一番、大きな声でこたえました。あまり声が大きいので、みんな、おおわらいです。

「では、出発! もう一度、しっかり空の上から巣の位置を見てください。まわりのけしきも、いっしょにね」

 おねえさんミツバチの注意が終わると、ミイたちは、いっせいに空に飛びたちました。

ブンブン、ブンブンブーン。高く低く、思いっきり羽をふるわせ、とんでいきます。いい風がふいてきました。風がプ〜ンと、いいかおりをはこんできます。花のかおりです。

「いよいよ、花に会える」

花の蜜と花粉で、たくましく育ったミイたち、若いミツバチは、まだ、花が咲いているところを見たことがありません。

 やがて、ミイの大きな複眼に、色とりどりに花を咲かせている大きな畑が、飛び込んできました。夏のひかりにかがやいています。

「わあー、きれいで、おいしそう」

と、わきでとんでいるパタちゃんが思わず、よだれをたらしました。

それから、遊園地で歓声をあげる子どもたちのように、みんな、おもいおもいの花に飛びついていきました。

?わー、大きな黄色! ヒマワリね。?

 ヒマワリはミイが、教科書や絵本で見て、そうぞうしていた以上に、大きくて、たくさんの花があっまってできていました。

「パタちゃんー、きて」

 ミイとパタちゃんは、黄色いおおきなお皿のようなヒマワリの上にならんで蜜を、たっぷりいただきました。

「ねえ、たかくとんで見ようよ」

 ふたりは、たかいところから、畑をながめてみたくなりました。

 青い空には、にゅうどう雲がモクモクわいています。畑のそばの小川がキラキラ、太陽と、なにやら、たのしそうに交信しています。

 おおがたのカボチャが見えます、やっぱり黄色い大きな花びらです。

「ごちそうだ、ごちそうだ」

と、トウモロコシの花粉の風のなかで、さわいでいるクラスのみんなが見えます。

 スイカに、きゅうりに、まっ赤なトマト。いろいろな夏の野菜が黄色い花をつけています。コンフリーだけ白っぽく、うすい紅色です。つりがねのようなかたちの花で、なかに入りにくそうです。

「サテ、お仕事にもどろうか。パタちゃん」

と、ミイとパタちゃんのふたりは、ドームのような丸いスイカのところへ、ブンブン、羽をならして飛んでいきました。まったく、スイカのつるつるした大きな丸みは、滑り台に、ぴったりです。

 ミイは、うれしくなって、とうめいな羽をからだにとじて、すべりおりました。パタちゃんもまねして、すべりおりました。ふたりは歓声をあげて、すべりおりました。

?あらあら、遊んでいちゃ、ダメじゃないの?

 ミツバチのおねえさんが飛んできて、おこられました。

 くびをすくめた、ふたりが、どこへいこうかと畑を見まわした時、畑からなだらかなに、つづいた山のなかで、チョロチョロと動いている、ふしぎな生き物をみつけました。

        (2)不思議なあかちゃんに、つづく。